水揚げ
花屋ギョーカイ用語で一番最初に「???」となるのがこの「水揚げ(みずあげ)」
意味としては、切花に花束やアレンジ、生け花に使う花の前処理をして持ちをよくすること。
なのですが、私の先生が使っている言葉でわかりやすいなと思ったのは「花に水を飲ませてあげる」イメージ。
産地→市場→・・と長旅をしてきた切花たちは、喉が乾いてカラカラ。
まずはお水を飲ませて、元気にしてあげましょうという事だそうです。
(最近はその限りではないようですが、運搬のしやすさから、わざと少し水の足りない状態にして出荷するというケースもあるそうです。)
方法によっては切り口を殺菌して雑菌の発生を防ぐという目的のものもあります。
ともあれ、「いかに花を長持ちされるか」がかかっている必須かつ重要な作業とのこと。
水揚げの方法は花の種類によって異なります。
下準備がいるものもあり、使う花の種類や数を考慮した段取りも重要。
代表的な水揚げ方法を以下にメモします。
- 水切り
容器に水を張り、水中で先端を斜めに1~2cm切る。
- 焼く(焼きあげ)
切り口をガスの火で真っ黒く炭化するまで焼いた後すぐに水につける。
葉や花が火の熱に当らないよう新聞紙で保護する。
- 湯あげ
60℃〜沸騰したお湯(温度については諸説ある)に切り口の先端1~2cmを数十秒つけた後すぐ水につける。
葉や花は新聞紙で保護する。
茎の中の空気を出す必要があるので、茎先を鍋底につけてはいけない!
- 叩く
花木に使われる方法で、枝の先端をブロック等の上において金槌で叩き割る。
叩きすぎると導管がつぶれてしまうので、適度に。
- 折る
茎の先端を勢いよく折ってすぐに水につける。
キクなどで一般的な方法。
- 薬品
専用の延命剤や、アルコール、酢、ハッカ、ミョウバン等に浸す方法。
種類によって逆効果の可能性もあるので注意が必要
- 逆さ水
花材を逆さに持ち、葉の裏から直接水をかける方法。
花に水がつくと痛むものには使えない。
- 深水
新聞紙にくるみ、花首の下まで水に浸す方法。
ベントネック(うなだれてしまった状態)になった時などに使う。
- 割り
茎の先端を斜めに切り、切り口をさらに一文字や十文字に切り込みをいれて断面を広げる方法。
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ところでこの「水揚げ」、色々な本や図鑑に記載はされているものの、同じ花でも違う処理が記載されていたりして、どれが正しいのかわからない。。
という質問を先生にぶつけてみたところ・・・
水揚げという処理のメカニズム、効果について科学的に研究や調査がされているわけではなく、花屋の民間療法的な慣習に過ぎないため、この花には絶対にこれ、という正解はないとのこと。
ある方法をやってみて、だめなら次の方法・・というように、花の状態や季節、現場によって様々な方法がとられているようです。
また、この「水揚げ」の派生として、植物が水を吸って茎や葉がシャキッと元気になった状態を「水があがってる」(この場合に漢字が「上がっている」なのか「揚がっている」なのかはよくわからないのですが)、逆にぐったりしてしまっている状態を「水が下がっている」といったりします。
どちらもお客さんからすると、「???」なので、使わないで済めばそれに越した事はないのですが、そこが業界用語の性。
他の言葉ではどうも説明しにくい、というか長くなってしまうからでしょうね。
最後に、基本に帰って・・
わからない言葉はまず辞書で調べる!
みずあげ みづ― 【水揚げ】 (名)スル
(1)船の荷物を陸に揚げること。陸揚げ。
「桟橋に―する」
(2)漁獲高。数量・金額いずれをもさす。
「―が落ちる」
(3)営業の売上高。
「―が少ない」
(4)芸妓・娼妓がはじめて客と肉体関係を結ぶこと。
(5)生け花で、花材が水を吸い上げて長持ちすること。また、花材に処理を施して、水の吸い上げをよくすること。
大辞林 より
5番目じゃないですか。
しかも花街なかんじの(4)の次。