高嶺格:とおくてよくみえない TOO FAR TO SEE(横浜美術館)


横浜方面の用事があったので、久しぶりに横浜美術館へ。
作家さんについては前知識ゼロでしたが、なんとなくタイトルが気になったので。

面白いなあと思ったのは、巨大な空間でオブジェ、光と文字を使ったインスタレーション作品。
おそらく砂か土を敷き詰められた空間は暗くて全貌が見えない。その中を異動する光が石やオブジェ(壊れた家具や玩具、骨董品のようなもの等)とそこに書かれた文字を映し出す。

「概念」や「共通認識」というようなテーマが、「文字」という「脳の中で変換する」情報と、「物体」そのものを使って(扱うテーマの難しさとは対照的に)小気味良いテンポで提示される。
おそらく「皮肉」なのだろうけど、そのいやらしさは無くて、「見せ方」も上手いので、見る人はぐっと引き込まれてしまう。


それから、巨大クレイアニメとそれをつくっている(?)人々を写した映像作品《God Bless America》は、個人的には手放しで好きとは思えないのだけれどインパクトがあり、気になって2回周くらい見てしまった。


作者自身のプライベートな体験を元にした「私作品」(私小説とか私映画とか・・のことをこう呼んでみる)に、生理的な嫌悪感を感じる場合と、ほっこりとした心地よさを感じる場合の2パターンがあるのだけれど、《在日の恋人》という作品は後者だった。
個人的な出来事から出発をしても、何らかのメッセージを自分以外の誰かやそれをとりまく社会とか、そこにある問題に対して「発信する」という「姿勢」や「態度」は、アーティストというか表現をする人にとってとても大切なことではないかと思う。


ちなみに、横浜美術館は月曜休館ではないのだけれど、この日はなぜかクイーンズスクエアが設備点検とかで全館休業。
みなとみらい駅を降りたとき、なんだか異様な雰囲気だった。
SCや駅ビルは年中無休が当たり前になってしまっているので、建物全体の店舗が閉まっている風景はちょっとSFのような、つくりもののような不思議な空気を醸し出していて、これもまた、面白い体験だった。


横浜美術館 高嶺格:とおくてよくみえない TOO FAR TO SEE