Haircut990 〜サービスの値段〜
ドラッグストアとマクドナルドとデニーズしかない我が町の駅前通りに、挑戦的な赤いノボリをあげる店がある。
「990円ヘアカット専門店」
あの、○Bハウスを凌駕する価格破壊だ。
チェーンではなく個人点のようで、不定休、営業時間も10時〜17時と消極的な営業姿勢にも関わらず、店は常にに老若男女が詰め寄せて繁盛している。
・・・やはり、ユーザーの心を掴むのは「価格」だけなのか?
マーケティングなんて机上の妄想にすぎないのか?
先日、スーパーで3個パックのプッチンプリンが88円で売っていたので、おそらく10年ぶりくらいに買ってしまった。
もしプッチンプリンが3,000円していたら、それはちょっとしたニュースにでもなるくらい、みんなの疑問を呼ぶことだろう。
「定価」の決まった商品はもちろん、そうでなくても「モノ」の値段の感覚値(価値観)は、何か特殊な要素や状況でない限り、それほど個人差はないと思う。
モノの場合はどれもだいたいの「相場」が一般的に設定されているし、原価とそれにまつわるコストが、買い手なりになんとなくでも想像ができるからだろう。
一方で形のない「サービス」については、だいだいの共通感覚はあるにせよ、売り手、買い手それぞれ個々に委ねられる割合が大きい。
そして「サービス」の場合、価格の低さは質の低さにつながりそうな感覚が「モノ」よりも強くある。
「サービス」に対してどれだけの対価を許せるかは、買い手のサービス内容自体への興味関心と比例するような気もする。
御託はさておき、
990円のヘアーカット術がいかなるものか。
身をもって体験してみることにした。
(先週美容室に行ったばかりだったので、なるべく小規模な範囲での調整カットのみで)
店のシステムは至って効率的になっている。
店内は一台のカット台と鏡、簡単な道具類の台が一つのみ。
対応は恐らく店長と思われる女性一人のみ。
店内のイメージはちょうど、町の開業医の近隣にある処方箋薬局のような印象。
ベンチと椅子が並んでいて、客は来店順に座り、順番がまわってくると、どんどんずれていく。
独りの施術時間はおおよそ10〜15分ほど。
QB同様シャンプーはしない。
(QBは未経験ですが、念のため。)
カット→片付けが終わると同時に店員が10円玉を持ってくるので、客は千円札を渡す。
レジでの受け渡しやレシートは一切なし。
そして、いよいよ自分の番がまわってきたので、その経営戦略についてヒアリングすべく、店長とおぼしき女性に話かけてみた。
私:「お客さんけっこう入ってますよね、いつもたくさん人が並んでるし・・(まずはアイスブレイク)」
女性店員:「あ、ええ、はあ・・・・・・(無言。それ以上話しかけてくれるな光線)」
・・・これが、990円なのか?
ということは、普通の美容室で容赦なく投げかけられる
「お仕事なにされてるんですか?」
「夏休みは旅行とか行かれます?」
「毎日暑いですよね〜」
「雑誌変えますか?」
「おつかれさまです♪」
等々のトークにはサービス料的な原価がかかっているということか・・・?
990円カットは、その分で会話がシャットアウトされたんだろうか。
(まあ実際にはその他の占める割合が大きいのだろうけれど。)
だとしたら、他の美容室でも「世間話抜き」で割引してほしい。
いやむしろ、割り増し料金がかかってもいいから抜きにしてほしい。
話がそれたが、肝心の腕前はというと・・・
・・・可もなく不可もなく。だった。
延びた部分だけ整える、とかなら全然あり。
ただ、それ以上のものと、世間話は求めてはいけない。